2025年1月21日 05:00 | 有料記事

朝もやに包まれて幻想的に浮かび上がる九十九谷=君津市

東山魁夷の出世作「残照」(東京国立近代美術館蔵)の解説パネルと夕映えの房総丘陵
見渡す限り広がるたおやかな峰。鹿野山の山頂付近から眺める九十九谷は、刻々と移り変わる光と影の情景が見る人を新たな境地へと誘う。
1946(昭和21)年冬、鹿野山を訪れた日本画家、東山魁夷(08~99年)が、夕映えの九十九谷の風景をモチーフに制作したのが「残照」だ。
「冬枯れの山肌は、沈鬱な茶褐色の、それ自体は捉え難い色であるが、折からの夕陽に彩られて、明るい部分は淡紅色に、影は青紫色にと、明暗の微妙な階調を織りまぜて静かに深く息づいていた」(新潮社『風景との対話』)。
終戦前後に父、母と弟を相次ぎ亡くし、空襲で自宅を失うなど人生のどん底にあったが、47年の第3回日展で特選となり、世に認められるきっかけとなった。
かなたに愛宕山、清澄山、鋸山、 ・・・
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