2022年10月30日 05:00 | 有料記事

きよ子さんが土砂崩れに巻き込まれた現場=2019年10月27日、市原市(吉野さん提供)

きよ子さんの遺影に手を合わせる吉野さん=市原市
「怖い思いをさせてしまった。私が死ねばよかった」。市原市の吉野寛さん(60)の妻、きよ子さん=当時(57)=は、房総豪雨で自宅の裏山の土砂崩れに巻き込まれ亡くなった。子育てに家事だけでなく、仕事も手伝ってくれていたきよ子さん。この3年、亡き妻の存在の大きさを痛感しながら過ごしてきた吉野さんは、今も感謝と後悔の念を抱き、きよ子さんの遺影に手を合わせる。
激しい雨が降り続いた2019年10月25日。自宅裏の排水溝は雨水であふれかえっていた。午後3時半ごろ、雨がやんできたため、吉野さんは裏山と自宅の間にたまった水を流し出す作業を始めた。きよ子さんも駆け付け、数メートル離れたところで手伝っていた。
午後4時ごろ、裏山の木に止まっていた鳥が一気に飛び立った。「逃げた方がいいよ」。きよ子さんの叫び声を聞き、吉野さんは自宅前の方に逃れた。裏山は以前も大雨で崩れたため、土のうが積んであった。
きよ子さんも吉野さんの後を追い逃げようとしたが、崩れてきた土砂と約1トンの土のうに巻き込まれ、土のう ・・・
【残り 696文字】