
育児への積極的な参画を促すため、男性の育児休業(育休)取得を後押しする働き方改革が進んでいる。一方で、育休中は仕事から離れることになるため、「ブランク(空白期間)」と捉えられ、昇進などに悪影響を及ぼすのではないかというイメージも根強い。しかし、育休中に家事や育児に積極的に取り組むことで、対人スキルやタスク管理能力が向上し、結果として「キャリアの武器」となるというデータもある。実際に育休を取得した男性の体験談や、企業の対応、各種データを通じて、その実態を探った。(デジタル編集部・町香菜美)
「正直、仕事より大変な期間だった」

「身を持って育児というものを経験したかった。生まれたばかりの時間は非常に貴重なので、家族で一緒に過ごしたかった」。会社員の伊藤雅浩さん(40)は2023年に53日間の育休を取得した理由について、こう語る。
元々料理や掃除といった家事は妻と分担していたが、育休中は長男にミルクをあげたり、おむつを替えたりと一通りの育児に積極的に関わった。夜間は長男が3時間おきに起きるため、共倒れにならないよう夫婦でシフト制を取り、交代で対応した。外出時にはおむつ替え台の有無や、飲食店にキッズチェアやキッズメニューがあるかなど事前に調べるようになったという。復帰後も退勤後には夕食や入浴の準備をし、寝かしつけまで担当している。
「正直、仕事より大変な期間だった」と育休を振り返る伊藤さんだが、ビジネス面でもプラスの変化を感じているという。仕事柄、子ども服に触れる機会はあったが、実際に育児を経験したことで、子どもの成長に合わせたサイズ感の目安が分かるようになり、キッズ向けのブランドへの理解も深まった。子どもと過ごす時間を確保するため、基本的に遅い時間までの残業をしないよう心がけており、その結果、業務の生産性が向上したと感じている。また、 ・・・
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