もう一度聖地かなわず 習志野・松山

 もう一度見たかった聖地の景色。だが夢はかなわなかった。習志野の松山大志は表彰式で銀メダルを受け取ると、すぐに外した。「これをつけるために、練習してきたのではない」。悔しさを胸にしまおうとはしなかった。

 エースナンバーで4番。文字通りチームの大黒柱だが、輝けなかった。二回から登板。打線が直後に3点を勝ち越してくれたが、四回に4失点。「中盤に粘っていれば、競った試合で勝てたかも。読まれていた」。準決勝まで5割だった打撃も無安打。二回は併殺で好機をつぶした。五、八回に放った飛球は右翼手のグラブに収まった。

 1年生の夏から4番を打ち、甲子園にも出場。「甲子園に行くと、人生が変わる」。そうチームメートに言ってきたが、自分自身へも向けられていた。「強豪と戦えていろんなことを知れる。甲子園に出ることで高校野球を知れる」。勝ち抜いたチームだけしか集えない特別な場所。選手として、成長できる最高の舞台だと分かっていた。

 準々決勝の成田戦で敬遠のボールを振りにいき、場内を騒然とさせた。それも熱く、責任感を持って野球と向き合っているから。次打者席で迎えた予定より早い夏の終わり。打席には2年生が立っていた。「一番つらい場面。できれば、自分がよかった」と優しく言った。

 「振り返っても試合はない。一戦一戦力を合わせてきた」と目線は前だけに向けた。「最初は感情的になって着けなかったが、みんなで頑張ってきたから」。表彰式、右手に握っていたメダルも途中からさげていた。


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