中谷順子選 【日報詩壇】

 赤い蛇を吐く 船橋 高橋保雄

転移した癌と共に朝 歩く
血痰が喉で静止した
グワーッ と
尾を引いて吐き出すと
屋根の上の鴉たちが
クワ クワ と鳴いて
バラ バラ と飛び立った
朝日がまぶしい
川岸の道には誰もいない
胸の奥で一匹の蛇が
目覚めたのだ 口を開くと
真っ赤な蛇がする ・・・

【残り 1378文字】



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