

東金市とフラフープに巡り巡った縁がある-。市外の人には一見、関連が薄そうに見える結びつきを掘り起こした動画が、城西国際大(同市)のユーチューブ公式チャンネルで公開された。学生たちが東金商工会議所や市と協力し、構想から4年越しで制作。65年前に同市の小学校が児童にフラフープ禁止令を出した意外な歴史をひもとき、名誉回復へ同市で新競技が考案された逸話も紹介している。(東金支局 森大輔)
◆縁をひもといて
動画の題名は「東金フープ物語」。メディア学部メディア情報学科映像芸術コースの佐藤克則准教授のゼミ生が制作した。東金商議所と協力し、学びながら地域振興に携わる「まちとJIU(城国大)のつながりプロジェクト」の一環だ。
城国大は東金市に拠点を構える一方で、同コースの学生は主に都内の東京紀尾井町キャンパスで学ぶ。動画制作の監督を務めた今春卒業生の古厩阿子さん(22)によると、動画の題材探しのため、東金を知ろうと市内を散策した際、JR東金駅前の東金中央公園で「HOOP RETURNS 2010」と刻まれた石碑を見つけたのが、フラフープに着目したきっかけ。
◆罪滅ぼしの石碑
石碑の由来は1958年のフラフープ大ブーム。全国の児童が熱中したが「体に悪い。腸捻転になる」という風評から、当時の同市立東金小学校が全国に先駆けて「フラフープ禁止令」を出したところ、報道などを通じて風評や禁止令が各地に広がり、人気は沈静化。しかし、その後、フラフープは身体に悪影響がないと分かった。
時は流れて約半世紀。同市はブーム終焉(しゅうえん)のきっかけをつくってしまった「罪滅ぼし」の気持ちや、人気復活への願いを込めて2010年、同小跡地の同公園に石碑を設置した。賛同した同商議所も、互いのフラフープをぶつけ合い相手のフープを落とす新スポーツ「EGフープバトル」を市と考案し、同年に第1回大会を開いたのだった。
学生たちは、こうした東金市とフラフープの歴史的な関わりに注目。動画制作の準備を19年に始めた。新型コロナ感染拡大の影響で計画は何度も延期と仕切り直しを余儀なくされたが、今年2月に同公園などで撮影をスタート。ついに6月、完成にこぎつけた。
◆間違いを逆手に
動画では、かつての禁止令や、「EGフープバトル」を子どもたちが楽しむ様子を再現。最後には「間違えを逆手にとれる街」と同市を紹介している。子ども役は同商議所関係者や市職員が務め、同商議所考案のご当地キャラクター「やっさくん」も登場するユニークな内容に仕上げた。
卒業後はフリーランスで映像制作を仕事にする古厩さんは「ほかの地方のPR動画にはない、東金市ならではの動画を作ることを意識した」と振り返る。動画作りを通じた同市民との交流に「全員が温かい人で『好きなことをやっていい』と言ってくれた」と感謝。多くの人が動画を見て「東金市に興味を持ってくれるとうれしい」と期待した。