【千葉魂】千葉ロッテ、最終戦前のミーティング 「緊張は当たり前。その上で…」

CS進出を懸けたレギュラーシーズン最終戦の試合前、吉井監督は選手たちを集めた
CS進出を懸けたレギュラーシーズン最終戦の試合前、吉井監督は選手たちを集めた

 室内練習場で試合前練習が終わると吉井理人監督は選手たちを集めた。今シーズン、練習前は何度かあったが、練習後は珍しい光景だった。シーズンラストゲーム。勝てば2位、負ければ4位という敵地仙台での143試合目での出来事だった。

 指揮官は「みんな、緊張してると思う。そもそも緊張は戦うか、逃げるか。どちらかの準備をするための人間が持っている機能。だから緊張するのは当たり前」と切り出した。

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 これは吉井監督が筑波大学大学院に通っていた時にスポーツ心理学の講義で一番、最初に学んだことだった。それを愛する選手たちに伝えた。なお、ここでいう「逃げる」は決してマイナスな意味合いではなく、遠い昔から人間が猛獣などと出くわした時に、命を奪われないための大事な手段を意味している。

 そして「この緊張の中で何ができるか。もう一回、考えて今日は自分たちができる事をするしかない」と続けた。さらに「この1年間、何をしたらダメか頭の中に入っていると思うけど、それを今日は忘れてしまっていい」と失敗を恐れ消極的にならないように、選手それぞれの頭の中に植えついている絶対にやってはいけないと思う事柄を指揮官自身が言葉を発することで、あえて排除させた。最後は「大事な試合ほどパーフェクトではなくてグッドでいい」と締めた。投手コーチ時代からよく選手たちに伝え続けている言葉だ。

 ミーティングの最後は今シーズン、次代を背負う選手の一人として期待をして起用してきた安田尚憲内野手に託した。安田が「チーム一丸となって戦って勝ちましょう」と元気よく言葉を発すると、選手たちの笑顔が弾けた。

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 吉井監督はあえて試合前直前にミーティングを行った意義を次のように説明した。「誰もが緊張をしているということを知ってほしかった。緊張している上で自分たちに何ができるかを考えてもらいたかった。一番、困るのは緊張をしているのを自分で認めようとせず、思い通りのパフォーマンスができず、苦しむこと。緊張をすると分かっていれば、対応も変わる。事前に分かっていれば、やれることを整理し考えられる」

 ゲームは先制、中押し、ダメ押しと打撃陣が効率的に点をとると、投手陣は無失点リレー。5対0で完勝。安田はレフトポール直撃の9号ソロを放った。「選手たちがよくやってくれた」。試合後、吉井監督は目を細め、霧雨の中、グラウンドで輝いていた選手たちをうれしそうに見つめた。シーズン2位。良い時もあれば苦しい時もあった。それでも最後は踏みとどまった。首位バファローズとのゲーム差は15・5ゲームと大きく離れているが、多くのことを得た一年だった。そして戦いは続く。「最後の最後まで行きましょう」。指揮官の呼びかけに選手たちは力強い拍手で応えた。シーズンからクライマックスシリーズ、そして日本シリーズへ。戦いの日々で成長を続けるマリーンズが勝ち進んでいく。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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