きょうから操業再開 魚の安全確認 漁師に笑顔 重油漂着問題で天羽漁協

 神奈川県三浦市沖で貨物船同士が衝突し、千葉県南地域の海岸に重油が漂着した問題で、漁を中止していた天羽漁協(富津市萩生、組合員146人)は9日、約20日ぶりに試験的な操業を行い、水揚げした魚の安全を確認した。油の見張りを強化するなど万全の対策を講じた上で、きょう10日から本格的に漁を再開する。関係者を招いた試食会も開かれ、漁師らに笑顔が戻った。

 同漁協は、油の漂着を受け、3月20日から全面的に漁を中止にしていた。同月いっぱいが漁期だったヒジキやワカメは今期の収穫を断念したが、事故当初より沖合の油が少なくなったことから、刺し網漁の試験操業を行った。

 日付が変わった午前0時ごろから、約40人が8隻の漁船に乗り込んで順次漁を開始。タイ、ヒラメ、タチウオ、ホウボウなど約500キロを水揚げした。

 試食会には、市職員や仲買人ら約200人が集まり、漁師がさばいた刺身や煮魚をほお張ると「おいしい」と顔をほころばせた。

 同漁協は、昼は監視船を出し、夜間の操業は極力自粛するか広範囲を見回りした後に網を投入するほか、関係機関との連絡を密にして油の状況を確認することなどを条件に、漁の再開を決定した。

 試験操業で約20日ぶりに漁に出た黒川清一さん(74)は「漁師がずっと陸(おか)に上がっていたら死んだのと同じ。久しぶりの漁は気持ち良い。やっと商売ができる」と笑顔を見せた。

 同漁協の礒貝秀樹組合長(52)は「毎日魚を食べている仲買人や漁業関係者もおいしいと言ってくれている。注意事項を守りながら安全な魚を出すので、安心して食べてもらいたい」と呼び掛けた。また、「海苔(のり)やほかの漁業の方は苦労している。そのことを忘れないでほしい」と話していた。


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