
連敗を6で止めたのは背番号「23」の魂だった。石川慎吾外野手が1軍昇格即4番で迎えた試合で、初回に訪れた1死一、二塁のチャンスで左前適時打。いきなり結果を出し、チームを勢いづけた。2ボールというシチュエーションから強く振り切れるゾーンの球だけに狙いを絞り、強い気持ちで打ち返した。
「連敗しているチーム状況。それだけに最初のチャンスが大事だと思っていた。チームにとっても自分にとっても、このチャンスをという想い。ラストチャンスの想い」
この言葉に込められた想いの通り、石川慎吾は、いつもラストチャンスだと思って日々を過ごしている。「次もある。次、次という考え方、気持ちの持ち方はボクの中では一切ない。ここはそんな甘い世界ではないことは知っているつもり」とプロ14年目、ファイターズ、ジャイアンツを経てマリーンズに入団をした男は自身の哲学を熱く語る。
チャンスは何度も訪れるものではない。目の前のチャンスを死に物狂いでつかむ人間だけが生き残れる世界。その考えから強い魂をどんな時も大事にしてきた。そして、いきなり好機が訪れ、結果につながった。
1点を返されて迎えた二回2死満塁の場面では押し出しの四球を選び、ほえた。石川慎吾の絶対に点を取ってやるという気持ちが勝った。1点差に詰め寄られて「またか」となりそうなチームを奮い立たせた。
「長いこと、プロでやらせてもらって、連敗をすることは長いシーズンでもちろんあること。その中で負けていたらどうしても後手に回る気持ちも、もちろん分かる。そしてここまでゲームに出ている人が一番、苦しい想い、しんどい想いをしている。ボクはこうやって1軍に呼ばれた中で、まずはいつも以上に声を出してムードづくりをすることを意識していた。連敗中に失点をするとまたかと暗くなりがちなので、意識して声を出して明るくしようと振る舞っていた」と話し、メディアにこの日の雰囲気を聞かれると「ボクが来たからムードは良かったと思いますよ」と胸を張り、笑いを誘った。
吉井理人監督は「きょうは慎吾。彼が流れをつくってくれた。期待通りにベンチが明るかったし、見事に突破口を開いてくれた」と絶賛した。昇格即4番起用が当たった。4番スタメンについて石川慎吾はお立ち台で「スタメンを見た時はビックリして、上から数えて、下から数えて、それを3回くらい繰り返した。腹をくくるしかないと思った。大きいのはなかなか打てる選手ではないので、なんとか後ろにつなぐ思い」と軽快なトークでチームだけではなく場内も和ませた。
モットーは「泥くさく」。そしていつも気持ちは「ラストチャンス」。そんな男がチームの窮地を救った。さあ、潮目が変わった。いざ5月攻勢へ。その中心で石川慎吾が叫ぶ。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)