
連敗を止める最後のマウンドを任されたのはプロ2年目、19歳の右腕だった。5月15日、東京ドームでのイーグルス戦。ここまでマリーンズは5連敗と沈んでいた。しかし、この日は初回に先制をするとその後も追加点を重ねていき、3点リードのまま最終回を迎えた。そしてマウンドに上がったのは木村優人投手だった。
「八回になった時に『最後、いくぞ』と言われました。自分の中ではもちろんいつでも行ける準備はしていましたけど、本当に最後を任されてびっくりした部分はあります」
試合後の木村は充実した表情で振り返った。心の準備はあったが、いざ、ブルペンの電話が鳴り、指示が下ると、これまで感じたことのない緊張感に包まれた。「何かいつもと違う感覚。ゲームを締める役割ですから」と木村。八回に鈴木昭汰投手がリードを保ちイニングを締めると、いつも通り10球、捕手相手に投げ込み、マウンドに向かう準備をした。一通りの球種を投げて最後は自慢のストレートで締める。それが木村の決まりだ。
東京ドームはプロ入り初登板。思い出深いマウンドだ。高校3年、侍ジャパンU-18壮行試合で大学日本代表と試合をして以来のことだった。小学生の時も地元・茨城からよく家族で観戦に来たスタジアム。4万629人の大観衆の前でピンチを背負うが、1回を無失点に抑えチームを勝利に導くと「楽しかったです」とあどけなく笑った。
前回登板となった5月11日のライオンズ戦は5失点(自責は2)。試合後、自分の持ち味は何かと見つめ直した。「自分の武器はストレートだと思う。でも、あの時、それではなくてカットボールを投げてカウントを悪くしてしまった。次、投げる時は、ある程度、ストレートでゾーンに投げてカウントをよくして押し切ろうと思った」と反省。自慢の剛速球でイーグルス打線に向かい、0に抑えた。
吉井理人監督はいつも、このスケールの大きな若者を「厳しい場面で使うことが大事。そういう場面で覚え、感じ、経験し成長させていきたい」と話をしていた。だからプロ初登板となった3月30日のホークス戦(PayPayドーム)はあえて同点の七回から登板させ、結果的にプロ初勝利を手にした。そしてこの日はチームの連敗を止める大事な試合の最後を任せた。指揮官は「あの試合は一番ポイントとなるのは八回と思っていたので、そこに鈴木。鈴木が抑えてくれれば、九回はその勢いで木村のボールなら押し切れると考えていた。ナイスピッチングだった」とたたえ、目を細めた。
19歳と11カ月のセーブ。球団では10代でセーブ記録したのは、1990年の前田幸長投手に次いで35年ぶり4人目。捕手も19歳の寺地隆成捕手で、10代バッテリーがセーブを挙げたのは、プロ野球では85年の渡辺久信投手、仲田秀司捕手のライオンズ以来40年ぶり2人目の快挙だった。
今、チームは苦しい戦いを強いられている。しかし、その中で若い力は確かに目を咲かせつつある。フレッシュな力がチームに光を照らす。明日への光明となる。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)