【千葉魂】横山、先発転向で即白星 感覚つかんだ力みない投球 千葉ロッテ(第472回)

先発勝利のウイニングボールを手にする横山
先発勝利のウイニングボールを手にする横山

 沈むチームに一筋の光明が差した。横山陸人投手が先発転向初戦となった京セラドームでのバファローズ戦で、最長の5回を投げて被安打2、無失点。見事にチームの悪い流れを断ち切り、連敗を止め、勝ち投手になった。

 「きょうは8割ぐらいの力で投げる感覚を大事にしていました。もちろん、思いっきり投げることも大事だし、いいこと。でも今までそれで自分の球をコントロールできていなかった」と横山は投球を振り返った。

 4月29日のバファローズ戦(京セラドーム)で同点の九回に登板するもサヨナラ負けを喫して、その後、1軍登録抹消。2軍では長いイニングを投げることで何か感覚をつかんでほしいとの首脳陣の意向から、先発での調整を行うことになった。その時に見つけた感覚が大きなヒントになった。

 「長いイニングを投げることになるので、思いっきり投げるのではなくて、ちょっと軽い感覚で投げてみようと試したら、思ったより球速が落ちなかった。打者も困っている印象。このくらいの力で投げても、出力は出るのかあと分かった」

 今まで150キロの速球を投げ込むために力んで目いっぱい、腕を振っていた。しかし、少し肩の力を抜いて投げても、ボールのキレは落ちてはいなかった。むしろ打者は力感なく投げ込まれる直球に打ちづらそうにしているように見えた。発見だった。

 「打者心理からすると、腕の振りと同じイメージ通りのボールが来ても怖くはないのだと思った。いいピッチャーって、軽く投げているように見えて150キロを超える。それが理想かなと。打者がイメージしているよりもボールが来る。それを大事にしたいと思って取り組んでいました」と話す。

 2軍で2試合に先発したタイミングで1軍合流を告げられた。それも今までのセットアッパーのポジションではなく、1軍でも先発だった。これには横山も「ビックリしました。2試合しか投げていなかったし、なんなら5イニングも投げていなかったですから」とその時の心境を語る。ただ、逆に開き直ることもできた。「自分で過剰に結果を求めないようにしました。自分で自分には期待していなかった。ファームでやったことを出せたらいいかなあと。それだけでした」と呼ばれた時の心境を語る。その卓越した想いがプラスに働いた。最初のマウンドに上がると、見事に先発勝利を手にした。

 「プロに入る前は高校時代も先発をしていたので、いつか先発したいなあとは思っていました」と横山は言う。しかし、大望を胸にプロの門をたたいた若者が目にした現実は厳しかった。「入ってみて、これ絶対に無理じゃんと思いました」と笑う。ブルペンで質の高いボールを投げ込む先輩たちを目にした。「先発どころか1軍で投げることすらできない」というのが率直な感想だった。

 キャンプを終えて行われた教育リーグ(練習試合)では打ち込まれた。「投げては打たれての繰り返し。ボコボコに打たれた。3年でクビになると思いました。マジで」と言う。自信は失い、心が折れそうになった。でも歯を食いしばった。「1イニングでいい。打者1人でもいい。少しでも抑えられるように頑張ろうと思い取り組みました」

 諦めない心こそが横山を成功へと導いた。プロ4年目には初勝利も初セーブも記録した。2024年には「プレミア12」の日本代表にまで選出されるようになった。そして今年、苦しむチームの中で急きょ、先発を任されると見事にその任務を全うした。「ナイスピッチングだった。横山には次も先発を任せたい」と大抜てきした吉井理人監督も評した。背番号「60」のプロ野球人生はまだ始まったばかり。「3年で終わると思った」というどん底から大輪の花を咲かせる。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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